フィリップ・ブズロー(PHILIPPE BUZEREAU)はフランス ブルゴーニュ地方ムルソー村の中央にある美しい佇まいのシャトー・ド・シトー(Château de Cîteaux)にあり、
我々エイ・エム・ズィーが2016年に2014年産から取り扱いを始めたばかりの人気急上昇中の生産者のひとつです。
今日はこの生産者さんの象徴的なワインをご紹介します。
シャトー・ド・シトー
フィリップ・ブズローはムルソーで9世代に渡って受け継がれてきた家族経営の生産者です。
現当主フィリップ・ブズロー(先代の父も同名)は2006年にドメーヌを受け継ぎました。
拠点を構える、ムルソーを中心に、北はアロース・コルトンから南はサントネまで5村で約18haの畑を所有し、21種(平均年産8万本)のワインを生産しています。
畑や醸造設備と共に村の中央にある壮麗で歴史ある建物、シャトー・ド・シトーも受け継いで来ました。
この城は1098年からシトー派の修道士によってここでワインが造られて以来、現在までその建物は守られています。
シャトー・ド・シトーは1792年に国営化された城で、その昔、現当主フィリップ・ブズローの曾曾祖父が城で働いていたこともあるそうで、
その縁もあって、1995年に購入したそうです。
ただ維持や管理が大変だったようで、それを2010年に売却した後、今では美しい外観を活かした素晴らしいホテルになっています。
モダンでコンテンポラリーな客室は19室のみで、一部の部屋からは葡萄畑を見渡せる絶景が楽しめるとあって観光客は後を絶たないそうで、ゴージャスなレストランやスパも人気との事です。コロナが落ち着いた際は是非、訪れてみて下さいね。
シャトーを所有時、ここはドメーヌのワインセラーや事務所として使っていただけだったそうで、
今から思えばとても勿体ない、言い方を変えれば贅沢とも言える使い方でした。
ホテルとなった事で、村の貴重な観光資源を有効活用できているようになり、結果的には良かったのだと言えます。
フィリップ・ブズローは全ての畑で厳格なリュット・レゾネで栽培され化学肥料や除草剤、殺虫剤などは一切使用していません。
リューディ毎に異なる個性を純粋に表現することを心がけ、古き良き昔ながらの自然で生態系や人に影響を与えない持続可能な栽培を実践しています。
これは著名な仏作家サン・テグジュペリの
『この地は先祖から受け継いでいるのではない、未来の子供達から借りたものだ。』
という言葉を大切にしているからです。
また新樽の多用は畑の個性を消してしまうと考えており、畑の個性を活かす為、新樽比率を抑えています。
2013年からは天然酵母で発酵させています。それらにより純粋な畑のテロワールを素直に感じる事が出来ます。
パリの3つ星ピエール・ガニェールやアルザスの2つ星ル・クロコディール等、著名なレストランでも採用されたり、
デカンタ誌、ギド・アシェットの常連となるなど、彼のワインは毎年、高く評価されています。
生産の6割はフランス国内で消費され、シャトー訪問客に試飲と説明を交えながら販売する事もとても大事にしています。
ただ今はコロナ禍でこういった交流が出来ないのは残念でなりません。
また2018年産からラベルデザインが一新されています。
前のラベルも十分素敵なデザインでしたが、新しいラベルはモダンですっきりとしたデザインになっていて、これもとても好評です。
旧ラベル(2017年産迄)
新ラベル(2018年産以降)
シャトー・ド・シトー自体は売却したものの、シャトー前の畑は現在も所有しています。
この畑から生まれるのが今回、ご紹介のMEURSAULT “VIEUX CLOS DU CHATEAU DE CITEAUX – MONOPOLE” 2018
(ムルソー “ヴュー・クロ・デュ・シャトー・ド・シトー” モノポール)です。
PHILIPPE BOUZEREAU
フィリップ・ブズロー
MEURSAULT “VIEUX CLOS DU CHATEAU DE CITEAUX – MONOPOLE” 2018
ムルソー “ヴュー・クロ・デュ・シャトー・ド・シトー” モノポール
税別参考上代 ¥8,170
モノポールとはこの畑をフィリップ・ブズロー単独で所有していることを意味します。
つまりフィリップ・ブズロー以外ではこの畑は存在しないのです。
またヴュー・クロとは「古い区画」の意味がありますが、ここは元々、シトー派の僧たちが開墾したのが始まりで、ブドウの樹を最初に植えたのが1098年なのだそうです。
一般的にはクロ・ド・ヴージョに最初にブドウが植えられたとされますが、それよりも早くこの畑に植えられたという言い伝えがあるのだと当主のフィリップは誇らしげに語っていました。
このシャトー・ド・シトーのクロ内にある単独所有畑は僅か1.7ha程しかない畑で、今はホテルとなったシャトー ド・シトーの眼前に広がる美しいブドウ畑でホテルの部屋からもこの美しい風景を眺めることができます。
これもホテルの人気を支える重要な要素となっているのです。
シャトーは売却しましたが、この畑はどうしても手放したくなかったという、彼らの思い入れの強い畑なのです。
さて、前振りが長くなりましたが、ワインは繊細なミネラル感と伸びのある酸がとても心地よいものです。
今はフレッシュな酸がキリっと引き締まった印象ですが十分に深みが有り、余韻も長いのが特長です。
クロ(塀)で囲まれている為、日中に受けた熱が溜まりやすく、そのおかげで熟度も十分に備わるそうです。
バターや蜂蜜のニュアンスがあり、厚みも有りながら、洗練された酸とミネラル感はとてもバランスが良いワインとなっています。
ピュアな果実感を活かす為、新樽比は約25%ですが、これがワインにより深みと厚みを与えています。果実感をしっかりと感じながら
奥行きの深さや複雑味を感じる造りで、過度に手をかけず、ブドウ本来の味わいを素直に表現しているようです。
美しい桜が舞う春は別れと出会いの季節です。
儚くも散ってしまった花びらをそっとグラスに浮かべられるのもこの季節ならではです。
残念ながら、コロナ禍で盛大なことができず、歯がゆいところではありますが、人生の門出を祝う気持ちは同じはずです。
今年の春は、ご家族や親しいご友人らとの慎ましくとも心は晴れやかなそれぞれの人生の節目に、このワインを選んで頂ければと思います。
余談ですが、現在ドメーヌを運営しているのは先代フィリップ・ブズローの息子のフィリップで
とても紛らわしいですがフランスでは珍しくありません。
弊社が長く取り扱わせて頂いているピュリニ・モンラッシェの優良生産者であるポール・ペルノも親と息子が共にポール・ペルノです。
(息子はポール・ペルノ ジュニア)とも呼ばれています。
名付けに関して、フランスでは以前、戸籍担当の役人が強大な権力を持っており、
一定の名前しか認められておらず、使用の許可は彼らによって独占的に管理されていました。
役人達は聖人暦(キリスト教で各々の日に特定の聖人を関連付けた伝統的なカレンダー)上に載せられた聖人名や
歴史上の偉人の名前の中から名前を選ぶように定めていたのです。
1966年からは神話に出てくる名前なども名前として選べるようになりましたが、
それでも限られた名しか使用が認められていませんでした。
フランス人の名前はファーストネームとミドルネームが登録されますが、
戦時中はファーストネームとして外国人風の名前自体を付けることが禁じられていました。
戦前生まれの人で外国人風のファーストネームを持つ人は、外国人風ではないミドルネームの方を通常使う名前とするようにまでされたそうです。
1993年になり、ようやく子供に損失を与えないという条件の下、子供の両親が自由に子供の名前を決定できることになりました。
ただ自由になったとは言え、今でも昔から馴染みのある名前を付けるのはフランスの国民性とも言えるのかもしれませんね。
フランス人に似た名前が多いのはこういった歴史があるからのようです。
フィリップ・ブズロー氏
フィリップ・ブズローはとても大柄で優しい笑顔が印象的で
外交的で親しみやすく、初めて会った気がしない不思議な魅力を持った人です。
以前にドメーヌで働いていた人が独立したのを援助する為に、彼のブドウを買っているそうで、ブルゴーニュ・ルージュには一部買いブドウが含まれます。
もちろん、単独でも造れるだけの収量はあるそうで、ブドウ購入前はドメーヌラベルとしてリリースしていました。
少量でも買い付けしたブドウをブレンドした事によって、ネゴス物となるので、
ドメーヌとしては正直な所、あまりメリットはないようですが、そこは共に働いた仲間を助ける為という熱い想いからそうなったそうです。
彼の男気が感じらますね。
彼のムルソーはとてもムルソーらしくリッチで厚みがありながらフィネスのある造りで、複雑な香りと奥行きのあるスタイルです。
大柄な体とは対極にありそうな繊細な味わいも備えています。
ムルソー村名格のMEURSAULT “LES NARVAUX”(ムルソー ”レ・ナルヴォー”)や
MEURSAULT “LES GRANDS CHARRONS” ムルソー “レ・グラン・シャロン”)、
1級畑のMEURSAULT-CHARMES(ムルソー・シャルム)など幅広いラインナップもあり、どれもとても好評です。
どれも少量生産で出回る数も少ないですが、もし店頭やレストランで見かけた際は是非お試し頂ければ幸いです。
バイヤー 菊池