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【テイスティング・シリーズVol.146】神様がもたらした歴史のロマンを感じずにはいられない奇跡のワイン

2022年4月18日

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Domaine Joseph Roty / ドメーヌ ジョセフ・ロティ  

2018 Charmes-Chambertin “Très Vieilles Vignes” Grand Cru  

シャルム・シャンベルタン “トレ・ヴィエイユ・ヴィーニュ” 2018年産  

 

バイヤーの菊池です。 

ブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタン村にある、このドメーヌを代表するワインと言えば、 
何と言ってもシャルム・シャンベルタン “トレ・ヴィエイユ・ヴィーニュ”です。 

今から140年ほど前の1882~1885年に植樹という、
途方もなく古い樹齢を誇り、他の生産者と比較するものがないほど、次元の異なる圧倒的な違いがあります。 

 


 

樹齢140年のシャルム・シャンベルタンの古木!様々な歴史の変遷をこの地で見てきたことでしょう。 

1882年頃の日本は西洋文化を取り入れた近代化が進み、人々の生活や慣習が大きく変化していった時代でした。 
1883年には鹿鳴館が開館してワインも楽しまれていたことでしょう。どんなワインが飲まれていたのか気になりますね。 

ちなみに1882年は、かのサグラダ・ファミリアの建設が開始された年(2026年完成予定!)でもあり、 
日本では日本銀行が開業された年で1885年は伊藤博文が初代内閣総理大臣に就任などがありました。 
昨年の大河ドラマも記憶に新しい、新一万円札の渋沢栄一も活躍していた時代ですね。 

これほど前に植えたブドウが未だ生きて、ブドウの実を付けるなんて考えられませんが、 
毎年、宝石の様なブドウを生み続けているのです。 
聞くところによると、植えられた木々は一度も引き抜かれた事がないそうです。 

樹齢が古くなると樹勢が衰え、収穫量は低くなりますが、時を経て地中深くまで、 
根を張ることで土壌の様々な要素を取り入れ、 
ブドウに複雑味を与えるのです。これは若いブドウでは決して得る事の出来ない特別なものなのです。 

通常、古木をワイン名に表すのにヴィエイユ・ヴィーニュ(Vieilles Vignes/ Old Vines(古木の意))という言葉がよく使われますが、 
この言葉には明確な数値基準がないようで、 
他社さん輸入の生産者さんによっては樹齢30年でもこの表記を使っていることもあるんだそうです。 

そんな事情はさておき、このドメーヌではヴィエイユ・ヴィーニュ(Vieilles Vignes)のさらに上にいく、 
トレ・ヴィエイユ・ヴィーニュ(Très Vieilles Vignes) という表記が使われています。 
Trèsとは英語ならVeryやHighlyが同義語で、つまりとてもとても古い樹だよということなのです。 

さて今回、ご紹介の2018年産は生産者のお話では、 
とにかく年の前半は雨が多く、春の終わりまで多くの水分があった年で、 
土に水分がこもるのを防ぐ為何度も土を掘り返す作業が必要だったそうです。 
このヴィンテージはブルゴーニュではベト病が全地域で見られ、その後気温は上がり、 
夏は安定したお天気に恵まれましたが、特徴的なことは2度の猛暑があったことでした。 
夜も24度以下にならないような日が数日続き、その時はつるが一気に20cm伸びたりもしたそうです。 

成長サイクルが例年に比べ早く、7月20日頃には既に葡萄が色付き始めていました。 
房は小さいものも大きく長いものもありましたが、 
共通していたことは、すべての実が小粒で凝縮したものであったので、 
とにかくぎっしりと要素が詰まった葡萄が穫れたそうです。収穫日は9月8日から行われました。 
2018年産のイメージは Chaleur(熱)で、たっぷりと太陽を浴びた年で、どっしりとした黒い果実が印象的との事でした。 

 


 

2018年の発酵前のジュースの写真。どれほど2018年の果汁が凝縮していたか、色から一目でわかりますね 

 

一年を通して予想外の天候や気温が続き、いつどこで病気が発生するかハラハラさせられた年だったそうです。 
タイミングを見極めて、必要な畑仕事をする体制を常時とっておくことが重要な一年でそれぞれの生産者の力が試される年でもありました。 
収穫した葡萄の実はとにかく小さく、カシスの実を取ってきたかと思うほどだったそうで、この画像を見ると一目瞭然ですね。最終的には果汁が凝縮して熟度と酸がバランス良く備わったことに安堵したことでしょう。 

そんな大変だった年の為か、生産者にとっても、とても印象に残る年だったそうです。 
手間のかかる子ほどかわいいみたいな感じなのでしょうかね? 

Charmes-Chambertinの畑はGevrey-Chambertinの丘の中腹の“AUX Charmes(オー・シャルム)”にあり
(つまりシャルムも名乗れるマゾワイエールの区画ではなく正真正銘のシャルムの区画ということです)、 
所有区画の多くは1882年に植樹されています。

ドメーヌを指揮するピエール・ジャン・ロティは、 
2018年ヴィンテージを「繊細で洗練された、しかし非常にエネルギッシュなワインを生み出した、優しさとフィネス」と雄弁に表現していますが、その言葉通り、優しさとフィネスが溢れ、ドラマチックなほどの洗練さと凝縮感、そして際立つ複雑性が感じられます。 
キメ細かくしっとりと滑らかな質感で、レッドチェリーやラズベリー、ワイルドベリー、カシス等のジューシーな果実香に甘草やバラの花びら、スミレ、牡丹やブラックペッパーやホワイトペッパーやトースティーな要素が感じられます。 
時が経つにつれ、グラスを満たすたびに香りや味わいに色々な要素が顔を出すモンスター的なワインです。 
これほどの要素を放つワインはブルゴーニュのトップ・オブ・トップのわずかなワインだけでしょう。 

やはり若さは感じられますが、とても柔らかく滑らかで大らかなので現時点でも十分に楽しめ、 
20年以上の熟成にも十分に耐えられる完璧な神の造られた宝石の様なワインです。 

2018年産は残りあとわずかですが、次の2019年産が2022年5月に待望の初入荷です。 
この歴史のロマンを感じずにはいられない奇跡のワインを是非、お試しください! 

 

Domaine Joseph Roty / ドメーヌ ジョセフ・ロティ 

Charmes-Chambertin “Très Vieilles Vignes” Grand Cru 

シャルム・シャンベルタン “トレ・ヴィエイユ・ヴィーニュ”  

2018年産 税込参考上代¥64,163 

2019年産 税込参考上代¥67,837 5月入荷予定