バイヤーの菊池です。
連日、溶けてしまうような、暑い日が続いていますが、おいしいワインと共に乗り切りましょうね。
さて、オーヴェルニュと言えば、ミネラルウォーター”VOLVIC”が有名ですが実はおいしいワイン産地でもあります。
AOCの下のIGPという格付けなので、あまり知名度はないのかもしれませんがワインは格付けよりも味わいですから、おいしいワインなら大歓迎ですよね。
今回、オススメするのはCave Saint Verny (カーヴ・サン・ヴェルニ)。
志の高い優秀な生産者組合として知る人ぞ知る存在ですが、約60%はオーヴェルニュの地元で飲まれ
残りもほぼフランス国内で消費されているので、仏国外で見かけることはほとんどありませんでした。
そんな中、10年ほど前、数あるサンプルから、偶然にもこのワインに出会えた事はひとつの奇跡といっても過言ではありません。
ブルゴーニュをメインに長年扱っているエイ・エム・ズィーは特にピノ・ノワールとシャルドネに関して取り扱いを厳しくしています。
もちろん、この品種に対してのエイ・エム・ズィーに求めてくださる高い期待に応えたいと思うからこそです。
だからおいしくない名ばかりのピノやシャルドネはおすすめしたくない。
ただおいしくても、価格がブルゴーニュよりも高いんじゃ、ちっとも面白くない。
でもおいしくてお手ごろなピノとシャルドネを日本に紹介したいという思いから数多くのサンプルを片っ端から試しました。
海外の展示会や、つきあいのある海外サプライヤからのサンプルはピノだけでも優に100を超えました。
そして出会ったのがこのワインだったのです。
そうそう、海外の展示会でも日本の優良なインポーターのバイヤーさん達からの反応がとても良く、是非取引したいと要望の多い生産者なのです。
エイ・エム・ズィーの独占取り扱いなのですが、でもさすがです! その目利きは確かですから!
味わいは、まさにブルゴーニュを思わせるしなやかでエレガントなスタイル。
南仏のピノもいいですが、やはり熟度が高すぎて、ピノの持つ繊細な酸がどうしても表現し切れていないんです。
ピノにとって寒暖の差はとても重要で、それはシャルドネも然り。
この差があることで、熟度と酸度がバランスよく備わるのです。
まさか、それがノーマークだったオーヴェルニュにあったなんて、まさに目からウロコです。ピノ好きなら必飲です!
ピノ・ノワールは果実味、酸ともに高いレベルにあり、均整がとれたスタイルに仕上がっています。
テクニカル的な話だと除梗してから15~20日間、28度で温度調節されたステンレスタンクで発酵され
その後、数%は新樽と残りはステンレスタンクで12ヵ月ほど熟成させます。
樽とステンレスタンクを最終的にブレンドする事で両者の持つ個性が合わさり、円みや柔らかさ、奥行きの深さが得られるのです。
完成度の高さはきっとまた多くの人をトリコにしてくれるでしょう。
コロナが落ち着けば、きっとワイン好きが集う会でブラインドで出したくなる衝動にかられるはずです。
これをジュヴレと言ってしまうのは本物を扱う身としてはいささかどうなのかと思うところではありますが、
プティ・ジュヴレ程度ならホント許せます。
ただヘタなブルゴーニュよりも、うまいので、心して飲んでください。
オーヴェルニュ恐るべしです。
実は畑の標高もジュヴレと同程度にあるという共通項もあるので、根拠がまったくないわけではないです。
ジュヴレの鉄っぽさとそれに付随する味わいがきちんと感じられつつ、チャーミングな要素もある、とってもいいピノに仕上がっているんです。
シャルドネもきっちり造ってます。ミネラル感、果実味、酸度とバランスがとってもいいんです。
気温の低い明け方に収穫後、選別を経て、プレスされ、ステンレスタンクで15~30日間、16度の低温でゆっくりと時間をかけて発酵され、熟成されます。
味わいもほんのりと上質なブルゴーニュを思わせます。
やはり繊細なピノをここまで仕上げてくる生産者は違うなと素直に思います。
決して都会的な派手な感じではなく、田舎のお蕎麦屋さんの看板娘みたいな、ほっとする印象を与えてくれる、そんなワインです。
ミネラリーで果実味、酸、そして奥行きもきっちりとある、これは言うならプティ・ピュリニでしょうかね。
そして何よりまず、ラベルがひと際、目を惹きます。
どんなに美味しくても、残念ながらラベルから興味を持ってい頂けない為に埋もれてしまうワインは本当に多いです。
このラベルはサン・ヴェルニと同じオーヴェルニュに拠点を置く、あのミシュランガイドでお馴染みのミシュラン社が実際に
フランス各地に設置している道路標識をモチーフにした特別なものなのです。
元々はイギリスの特定マーケットに向けて造られていたものですが、日本でも取り扱いしたいと交渉し、今日に至るのです。
さすがに視認性を重視した道路標識がモチーフだけあって、遠くからでもとても目立ちますね。
余計なものが排除され、必要な情報だけがストレートに伝わる秀逸なラベルです。
最初はラベルの見た目に魅かれて買ってしまうという方もきっと多いと思います。分かります、その気持ち。
でもラベルの好印象だけに決して留まらず、中身もその期待を裏切らない、おいしさがしっかりと詰まっているのです。
本当、いい生産者だなぁとしみじみ思えるワインです。リピートが多いのも特徴です。
まだ試されてない方、是非お試し下さいね。
CAVE SAINT VERNY / カーヴ・サン・ヴェルニ
2018 PUY DE DOME PINOT NOIR
2018 PUY DE DOME CHARDONNAY
税別参考上代 各¥2,170
バイヤー 菊池
【テイスティング・シリーズVol.61】フランスの隠れた名産地、オーヴェルニュから
ブルゴーニュファンをも唸らせるデイリーワイン!
2020年8月31日
テイスティングレポート