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【テイスティング・シリーズVol.232】シャンパーニュ ピエール・ジモネが美味しい理由

2024年1月15日

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シャンパーニュ ピエール・ジモネが美味しい理由

それはPierre Gimonnet & Fils(ピエール・ジモネ・エ・フィス)は、リザーヴワイン(以前のブレンド用スティルワイン)を
タンクではなくシャンパーニュで唯一、100% 750mlボトル熟成させている事が大きな理由のひとつです。

一般的にシャンパーニュは90%が”ノン・ヴィンテージワイン”で、
これは複数のヴィンテージをブレンドしたものから造られます。
対して単一年産ブドウだけならば
年代の入ったヴィンテージ・シャンパーニュになります。
従ってノン・ヴィンテージのシャンパーニュを造る為に、
すべての生産者は過去数年のリザーヴワインをより良い状態で保管しようとします。

一般的にシャンパーニュでは、ワインは次のようにリザーヴワインを保管しています:
1. タンク(ステンレス、ホーローまたはセメント)
2. 木桶(多くはフードル)
3. ボトル

一般的に保管する量は膨大であり、各メゾンが保管する目途としては、
1ヘクタールにつき8000キロ(つまり1ヘクタールにつき51ヘクトリットル)で、
ほぼ一年の収穫分に値します。
ノン・ヴィンテージのシャンパーニュを造る際には大体が30-50%のリザーヴワインをブレンドするので、
リザーヴワインの保管の方法は大変重要であり、
それが生産者毎のスタイルに大きく影響を及ぼすことは言うまでもありません。



シャンパンシャンパーニュピエールジモネ泡白


そこでピエール・ジモネでの保管方法はどうかというと:
ピエール・ジモネのほぼ全てのワインは白ブドウのみから造られる
”Blanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン)”である、ということ。(Roseは極少量)
つまりジモネのスタンダードキュヴェCUIS 1ER CRU BRUT BLANC DE BLANCS Non-Vintage
(キュイ・プルミエ・クリュ ブリュット ブラン・ド・ブラン / 以下、CUIS BRUT NV)
は一般の複数の品種をブレンドするのとは異なり、
100% コート・デ・ブラン地区(Côte des Blancs) からのシャルドネのアッサンブラージュになります。

つまりピエール・ジモネのリザーヴワインにはこの地区特有の”ミネラル感”があるのです。
従って攻撃的過ぎず、かつ特有のフレッシュさをキープできるようバランスをとりながらの保管が不可欠なのです。

そこで、現当主のオリヴィエ(Olivier)とディディエ(Didier)兄弟の祖父であるピエール(Pierre)と父ミシェル(Michel)は
ボトル(750ml)での保管を1982年に思いついたのです。
目的はワインが熟成を行う中で、できる限り
”ゆっくりと熟成させること”そして”フレッシュさを保つ”ことのできる方法を見つけることでした。
これを試みた結果は、生産者の想像をはるかに上回るものでした。
つまりステンレスやセメント桶で保管したワインと比べて、
はるかにボトルで保管したものの方が素晴らしかったのです。

考えられる理由として:

ジモネではリザーヴワインの瓶に液体を入れる際、微泡(通常の泡の1/4)を形成する為、
5g/Lの糖分を加えますが、この時、大事な二つの現象が起こります:

1. 炭酸ガス下となる、つまり”より還元”した状態となり、
 タンクに比べ酸素が少なく、ワインの熟成スピードが遅くなる
 (タンクでは2年後にワインは”疲れ”始めるのです。
 ボトルの場合は10年間問題なく保管することが可能)

2. ワインは”ポジティブ”に熟成していきます。
 発酵にて形成された澱(Autolysis役目を終えた酵母)はワインに栄養を与え続けます。
 つまりこの澱のお陰でワインはよりリッチでトーストしたアロマを得ることができるのです。
 この二つの現象をわざと遅く施した、
 ポジティブな熟成によって、シャンパーニュ ピエール・ジモネの
 理想的なスタイルが形成される、というワケなのです。

以下は補足です。

1. ピエール・ジモネのスタイル(フレッシュさとエレガンス:力強さよりハーモニーを優先)をリスペクトする為に、
 ジモネが理想とするリザーヴワインの割合は全体の30-35%

2. 1982年以来、全てのリザーヴワインはこの方法で保管されています

3. ジモネのメソッドは”ソレラシステム(出荷の度に新しい樽から古い樽へと注ぎ足し、味わいを均一に保つシステム)”と反対です:
 つまり”ヴィンテージ毎”に保管しているのです。

4. ピエール・ジモネのリザーヴワインには2種類がある:
 ひとつは毎年Non-Vintage用としてプレ・ブレンドしておくもの(つまりリザーヴワインの混ざっていないその年のNVのブレンド)。
 もう一つは”ドクター”ワイン、
 つまりもしあるヴィンテージの一区画に個性の強すぎるものあった場合、
 それを使って将来的にヴィンテージの個性を”修正”することができるものです。
 例えばパワフルなワインが難しいヴィンテージにドクターワインを加えたり、
 日照量が多すぎた年にとてもミネラル感の強いワインを加えるといった具合です。
 従い毎年、これらのリザーヴワインがピエール・ジモネの財産であり、
 このお陰でピエール・ジモネのスタイルに忠実なBrut NVを造り出すことができるのです。

 ― CUIS BRUT NV :

スタンダードキュヴェとはいえ、ピエール・ジモネにとって一番プライオリティの高いキュヴェです。
だからピエール・ジモネの厳しい基準をクリアすることに必要であれば妥協は絶対にせずに使用するのです。 

― ピエール・ジモネは毎年必ず”優秀なドクターワイン”を選んでおり、
それはブレンドに混ぜることはしません。
将来のリザーヴワインのヴィノテークに加わります。
このヴィノテークがジモネの将来を築いているのです。

― 現在保管しているリザーヴワインボトルの数は約20万本(1500ヘクトリットル)
約10年分の違うヴィンテージがあります。

― 毎年CUIS BRUT NVキュヴェ(年間生産量15万本)を造る為、5万本を開けます。

マグナム(1500ml)でリザーヴワインを保管する方がベターなのではと思うかと思いますが、
勿論シャンパーニュもワインもマグナムやジェロボアム(3000ml)の方がより良い状態で熟成してゆくことには間違いなく、
その理由からCUIS BRUT NVもマグナムが、一番コストパフォーマンスが高いです。

余談ですが、20世紀を代表するイギリスの政治家でシャンパーニュ好きでも知られる
サー・ウィンストン・チャーチル(1874-1965)が
「マグナムは二人で飲むには理想的なサイズだ、特にパートナーが飲まない場合は』と言っていたそうです。
また彼は「朝食の前には酒は飲まない」と言う言葉も残していますが、
朝食時以外はずっと飲んでいたということはよく知られています。
朝食後すぐにウイスキーのソーダ割りに始まり、ランチにはシャンパーニュ、午後からまたウイスキー、
夜はシャンパーニュ、ワイン、ポートやコニャックまでを口にし、血中からアルコールが無くなるということがなかったそうです。
激動の時代に生きた彼のそばには常にシャンパーニュやワインやウイスキーなどのお酒があったようですが
「私は酒で失ったものよりも多くのものを酒から得てきた。」という言葉も残しています。
彼が何を失ってしまったのかは気になりますが、
我々は何も失うことなく、お酒は楽しくほどほどに付き合いたいものですね。

さて話を戻しますが、リザーヴワインに関しても同じ事が言え、
1500mlが750mlボトルに比べてクオリティの高いものになりますが、
その結果が明白に出てくるのは熟成3年以降であり、
ピエール・ジモネの多くのリザーヴワインは3年以内に開けることが多い為とコスト面でも恩恵がある為、
リザーヴワインは750mlボトルのみで行っているのです。

スタンダードキュヴェであるCUIS BRUT NVは
白いブーケやリンゴの花、エレガントさとバランスを兼ね備えたクリーミーな口当たりで
果実感はフレッシュに仕上っています。
5.5-6g/Lの控えめなドサージュが絶妙な味わいのバランスを与えているのです。
ミネラル、酸度、フレッシュ感がとてもピュアに感じられる特別なキュヴェです。

ワインジャーナリストの山本昭彦氏はピエール・ジモネに関して次の様に述べています。
ダイナミックに変動するシャンパーニュには、かつてなく多彩なスタイルがあふれている。
樽発酵・熟成、ノンドゼ、単一畑、古代品種……そうした中でピエール・ジモネ・エ・フィスを
”保守的”と見る向きもあるが、軽視するのは間違っている。
コート・デ・ブラン地区のテロワールを正確に表現するクリーンなシャンパーニュは、
トレンドを超えたブラン・ド・ブランの1つのお手本である。
味わいはクラシックだがぶれがない。
少量生産のグローワーを追い求めるのもいいが、クラシックをまず知ることも大切だろう。

さて色々と述べましたが、ピエール・ジモネが美味しい理由に関して興味を持って頂けましたでしょうか?

特にリザーヴワインをボトルで熟成させる点は、
コストよりも品質を重視したジモネならではのものです。
目指すスタイルは独自のもので孤高とも言えるほど他社とは大きく異なり、
真似したくても出来ない大きな点だと思います。
それにより味わいに大きな違いが生まれるのです。
このオリジナリティが紛れもないジモネのスタイルを生み出しているのです。

これまでジモネを飲んだことのある方や、まだ飲んだことのない方も、
是非、飲んでいただいて、ピエール・ジモネの熱い想いや情熱を感じて頂ければと思います。


シャンパンシャンパーニュピエールジモネ泡白

オリヴィエとディディエのそれぞれの息子達もドメーヌの運営に加わっている。
左からArnaud Gimonnet, Didier Gimonnet, Olivier Gimonnet, Pierre-Guillaume Gimonnet


シャンパンシャンパーニュピエールジモネ泡白


PIERRE GIMONNET & FILS
ピエール・ジモネ・エ・フィス
CUIS 1ER CRU BRUT BLANC DE BLANCS NV
キュイ プルミエ・クリュ ブリュット ブラン・ド・ブラン

税別参考上代
375ml ¥5,500
750ml ¥9,350
1500ml ¥22,000


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